経営事項審査申請は略称で「経審(けいしん)」と呼ばれ、公共工事を直接請負う建設業者は必ず受けなければならない審査です。
いわゆる公共工事を請け負う請負会社として維持すべき経営の健全度を証明する目的があります。

また公共工事を獲得するにあたり不可欠なプロセスが入札です。
公共工事を確実に受注していくための、2つの申請について理解を進めていきましょう。

経営事項審査(経審)とは?

建設業者は公共工事を請け負うにあたり、経営事項審査を必ず受けなくてはなりません。
公共事業の受注は社会に対し信頼性が担保された建設業者としての証明になるため、民間企業からの受注の呼び水になります。

また民間工事の受注には基本的に経営事項審査は必要ないものの、公共工事の下請け時には元請け業者から審査を勧められる場合もあります。

7か月以内に通知書を受け取らなければ新規受注が無効に?

経営事項審査の有効期限は、審査基準日(決算日)から1年7カ月です。

上記の決算日から通知書の入手まで7か月のため、残り1年のあいだに審査を完了しなければなりません。
通知書が遅れて7か月を超過しているあいだに入札で落札しても、発注者と契約できない事態が生じます。

そのために決算日が終わるとすぐに経営事項審査の申請を行うスケジュール管理が重要です。

建設会社の多くは経営事項審査を担当部署に任せ、経営陣は営業部隊とともに新規案件の獲得に邁進しているケースが多いでしょう。
折角受注を獲得したとしても、資格面で破談となってしまっては勿体ないことです。

経営事項審査で問われる内容

経営事項審査では、経営規模の客観的認定や技術力の評価、社会性の確認、経営状況の分析が問われます。
それぞれ具体的に何が取られるのか、かつ審査機関をまとめます。

採点対象詳細審査機関
経営規模(X)完成工事高(X1)
自己資本額(X2)
利払前税引前償却前利益(X2)
知事許可業者
知事大臣許可業者
国土交通大臣
技術力(Z)技術職員数
元請完工数
知事許可業者
知事大臣許可業者
国土交通大臣
社会性等(W)労働福祉の状況
建設業の営業年数
防災活動への貢献度
コンプライアンス
経理状況
研究開発状況
知事許可業者
知事大臣許可業者
国土交通大臣
経営状況(Y)売上高経常利益率など各経営数値
自己資本比率など財務指数
キャッシュフローなど
登録経営状況分析機関

これらの要素から評点が行われ、最終的に総合評点(P点)が計算されます。

P点=(X1×0.25)+(X2×0.15)+(Y×0.2)+(Z×0.25)+(W×0.15)

審査終了後には総合評定値通知書が届きます。
このなかに上記の総合評点が記載されています。

自治体によってランク付けが行われている場合も

国の当該行政庁ではなく、自治体によってランク分けが行われているケースもあります。

建設業者は国だけではなく、自治体の審査がどのような基準で行われているのかを把握し、その審査でも高評価がされるような対策を進めることが重要です。
いわゆる民間案件に訴求効果がある案件は、地域に根ざした自治体の公募案件である場合も多くあります。

建設業全体の動きとしては対外的な姿勢はもちろん、会社内の組織構築度なども経営事項審査で採点の対象とされます。
上記の社会性等(W)への取り組みで差がつく場合も多いので、対策を進めるようにしましょう。

入札参加資格申請について

公共工事の入札においては、国・県・市・公団などの各発注者が行う入札参加資格審査(指名願い)を事前に受けておくことが必要です。

この審査に参加する条件として、上記の総合評価通知書(P点)の獲得が前提となります。
入札参加審査は受付期間により時期が決まっているため、時期を逃さない準備が大切です。

入札はどのように実施されるのか

入札とは公共の請負工事を受注する際に、複数の業者が自治体に見積価格を示し、受注者を定める方法です。
自治体とネットワークのある業者に限定して受注が行われる契約(随意契約)よりも数多く実施されます。

一般競争入札入札の資格を持つ不特定多数の業者が参加します。
発注者である自治体は案件の公告を出し、集まった業者のなかから
「発注者にとって最も有利な条件を出した業者」が案件を獲得します。
指名競争入札発注者である自治体がいくつかの業者を指名し、限られた業者同士で競わせて落札者を決める方式です。

入札に参加するには、もちろんP点を1点でも獲得していればいい話ではありません。
公共工事によっては当該案件は800点以上の高得点を獲得した建設業者に定める、というような選抜条件が課されるケースもあります。

P点の最高得点は2,136点ですが、現実的に1,000点を超えることは難しく、800点を超えると上位の建設業者として見なされます。

案件にもよりますが、よく映画やドラマで見る一般的な入札のイメージである「最低価格を提示した業者が案件を受注できる」ケースばかりではありません。
提示価格に加え、P点や経営事項審査申請の内訳点を見る場合もあります。
その場合は当該自治体に加え、2名以上の学識経験者が意思決定に関わることが一般的です。

入札参加資格申請には悪徳業者を排除する目的も

入札参加申請は希望する建設業者のランク分けのみ目的ではありません。
暴力団と関係がある会社やペーパーカンパニーを排除する目的があります。

また会社の実態に問わず粉飾した経営事項審査を申請する会社には、虚偽防止に向け担当行政庁と連携を取り、排除する仕組みが構築されています。
具体的には前年と比べて著しく数字が増加し、水増しの可能性が疑われるケースなどです。

後ろめたい事実がなくても、いかに疑われるような記載を避けるか、も申請書作成における重要なポイントの1つです。

経営事項審査申請と入札参加申請には当事務所へ依頼を

入札にて公共工事を獲得することで、民間の案件依頼を検討する顧客に対し大きなアピールとなるとともに、会社全体のブランディングとしても高い効果があります。
優秀な技能者が集まってくるなど、採用面でも高いメリットがあるでしょう。

また建設業者には一人親方だったり、数人の職員しかいない会社も多いです。
そのような会社が本業の手を止め、平日の日中に何度も役所に足を運び書類のやり取りをするのは大変ですので、制度に精通したスペシャリストへお任せするのが安心です。

経営事項審査申請および入札参加資格申請は専門知識がないと作成に手間取る箇所も多く、専門家の知見が不可欠とされます。
ぜひ、当事務所にご相談ください。
皆様からのお問合せを一同お待ちしております。